バックスクリーンにミサイル映像などを流しつつ演説した(C)EPA=時事

 

 まるでアップルの新製品発表会だった――。

 筆者の知るロシア人はこんな感想をもらした。

 3月1日に行われたウラジーミル・プーチン大統領の議会向け教書演説のことである。

 現地時間正午に始まった演説の前半は、ほぼ経済・社会問題に費やされた。人口減少を食い止め、平均寿命を延ばし、現代のテクノロジーを取り入れた社会インフラの整備や経済成長を実現し……と熱弁を振るうプーチン大統領の姿を見ながら、なるほど今回の演説は、内政面で明るいビジョンを描くことに重点を置くのだろうと思っていた。3月18日には大統領選が控えており、そのためには有権者に夢を見せる必要があるからだ。プーチン大統領も「今後の6年」という言葉を繰り返し、次の任期を自身が舵取りしていくのだという決意をにじませていた。

 ところが後半、安全保障に話が及ぶと、雰囲気は一変した。米国によるミサイル防衛の推進についてひとしきり批判を繰り広げたのち、「新製品発表会」が始まったのである。もちろん、プレゼンされたのは新作スマートフォンではない。各種の新型核兵器――それも、これまで映像が公開されておらず、開発計画自体も明らかにされてこなかったものばかりであった。

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