問題解決を図るため、ローマ法王は「変化」を恐れない姿勢を示している (C)AFP=時事

 

 アフリカ大陸における地域秩序の維持問題は、EU(欧州連合)の統合過程と連動し始めた。2015年にシリアとリビアからの難民がEUに押し寄せると、次のような動きが時差をともなって連鎖したのである。

難民発生→トルコ・ギリシャなどでの一時滞留→アンゲラ・メルケル独首相の100万人単位での受け入れ宣言→難民の受け入れによる治安課題の深刻化→難民排除を唱える極右勢力の台頭→欧州各国で、ポピュリズムは制御可能かという政治課題の発生→他方、難民排除の徹底を期す旧東欧各国に対するブリュッセル(EU本部の所在地)の違和感の高まり→EU統合は、「多段階スピードによる調整」という実質上の統合過程の停止→ロシアの軍事攻勢への欧州による共同対応は可能かという、EUにとっての存立基盤問題の発生

 ――これが2015~17年までの動きだ。もちろんこの間、各国ごとに多少の差異はある。ドイツは昨年9月の選挙で、CDU・CSU(キリスト教民主・社会同盟)とSPD(社会民主党)との連立政権は、極右陣営を構成するAfD(ドイツのための選択)に乗ずるスキを与えた。結果として2018年のドイツ政局は、ポスト・メルケルを模索せざるをえなくなっている。

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