会見でも無念さをにじませていた(C)EPA=時事

 

 レックス・ティラーソン国務長官の解任は、不気味なタイミングで行われた。そもそも昨年10月に、ティラーソン国務長官がドナルド・トランプ大統領を「愚か者」と呼んだことが報道されて以来、解任はいつあってもおかしくない状況となり、問題はタイミングだけという状況だった。しかし今回の解任は、我々同盟国が恐れる最悪のタイミングで行われた。

 これまで、政権内のパワーバランスは、ジョン・ケリー大統領首席補佐官やジェームズ・マティス国防長官らの現実派が、スティーブン・バノン前首席戦略官兼上級顧問などの「アメリカ・ファースト」の現状否定派とトランプ大統領による極端な政策にブレーキをかける役割を果たしてきた。しかし、最近のトランプ政権では、それらのブレーキが効かなくなってきた。

 トランプ大統領は5月末までに北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に会うという驚きの決定をした。これは、一方的な軍事行動よりはましかもしれないが、北朝鮮のこれまでの裏切り行為を考えれば、常識的な政策とは思えない。さらに、鉄鋼やアルミニウムへの一方的な関税措置というのも、これまで世界の自由経済を支えてきた米国の伝統的立場からの大きな離脱であり、欧州やアジアの同盟国を困惑させるものだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。