消えた“ヒマラヤの王国”で進む国家再建

執筆者:片山哲也2008年8月号

中国・チベット自治区とインドに挟まれた小国・ネパールが新たな国家づくりを進めている。共和制の宣言まではうまくいったのだが――。[カトマンズ発]ネパール制憲議会は五月二十八日、二百四十年続いた王制(シャハ王朝)を正式に廃止し、新たな政体として連邦共和制を導入した。王族から一般市民となったギャネンドラ元国王はその二週間後、「居城」首都カトマンズのナラヤンヒティ王宮を明け渡し、世界唯一のヒンズー教を国教とした君主国は名実ともに幕を閉じた。国の礎となる憲法づくりが近く始まり、内戦後の国家再建は最終段階に入る。 共和制が宣言された日、カトマンズは街全体が浮き立ったような空気に包まれた。制憲議会が進行中の国際会議場周辺には、頬や額に絵の具で国旗や「共和制」の文字を描いた若者が集まり、祝賀の歌や踊りで盛り上がっていた。「議員たちが共和国宣言をしっかり履行するよう、圧力をかけるためにここへ来た」。名門トリブバン大学の学生ラルー・オリさんはそう言いながら、ラジオで議事進行のニュースをチェックするのに余念がない。政体が変わることに最後の瞬間まで半信半疑らしい。彼のすぐそばで、若い男女の一団が「リパブリック・ジンダーバード(共和制万歳)!」と叫んだ。

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