連立交渉の中で首相候補に擬せられる「五つ星運動」のディ=マイオ氏(右)と、同党創設者のコメディアン、ベッペ・グリーロ氏 (C)AFP=時事

 

 イタリア人は政府を信用していない。

 ローマ帝国の下、世界に冠たる文明を誇った国が、どうしてゴミの山1つ片付けられないのか。その昔、ナポリ市の公共機関が麻痺し、ゴミが町中に溢れかえったことがあった。その時、誰もがこう思ったが、イタリア人にとって個人の空間と公の空間とは別だ。

 個人の技量としては、バイオリンにしろ、スポーツカーにしろ、ファッションにしろ、イタリアの右に出る者はいない。それがこと政治やゴミ収集や治安の問題になると、からきしこの国はダメになる。

 ローマに行く日本人観光客でスリの被害に遭わずに帰国できた者がいるとすれば、それは幸運な部類に入る。何せ、くだんの国のスリの技は神業の域に達している。電車の中に居合わせた日本人の気を一瞬パッと引き、その隙に、日本人の方にすられたという感覚を覚えさせることなく、ポケットから財布を抜き取る。これは見事と言うしかない。こういう個人技はしかし、イタリアでは公の空間に見ることはない。

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