ドイツ最大のリテール銀行を狙う各国の金融機関。そこから導火線に火がつき、欧州の金融地図が一気に塗り替わる可能性も――。 欧州で金融機関の再編が胎動し始めた。台風の目はドイツ。郵貯民営化会社であるポストバンクが売りに出ているのだ。 ポストバンクといえば、資産規模ではドイツで十三位に過ぎないものの、顧客口座数ではドイツ最大のリテール(小口金融)銀行だ。全国に九千カ所という郵便局ネットワークは圧倒的な強みで、ドイツ国内の他の銀行はもちろん、欧州諸国の銀行も買収を虎視眈々と狙っている模様だ。「買い手は英国のロイズTSBと(独銀最大手の)ドイツ銀行の二行に絞られた」。英国系メディアは六月末にこんな報道を流した。だが、事はそう単純に収まりそうにない情勢だ。 もともとロイズTSBは英国国内のリテール事業が基盤で、国際展開には力を注いでこなかった。ところが、サブプライムローン問題で他の大手銀行が深手を負う中、同行は比較的傷が浅いとされる。ロイズTSBは千載一遇のチャンスとみて、ドイツなど英国外でのリテール参入方針を決めたという。 だが、実際にポストバンクの買い手として優位かと言えばそうとは限らない。伝えたのが英国系メディアということもあり、贔屓目だろうというわけだ。

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