ロシア外交官追放について微妙な立場のメルケル独首相と(中)と、親露でも断行したハンガリーのオルバン首相(左)(C)AFP=時事

 

(承前) 今回、イギリスはうまく立ち回った。そう簡単には一枚岩にまとまらないEU(欧州連合)諸国をよく「反ロシア」でまとめ上げた。イギリス外交の勝利と言っていい。

 ただ、今回EUがまとまった裏には、積もり積もったEUの反ロシア感情がある。ロシアはこれまで繰り返しサイバー攻撃や選挙介入をEUに仕掛けてきたのであり、今回の暗殺未遂事件はその延長に他ならない。今回のような暗殺未遂は今後も起こりうるだろうし、何より、ロシアが執拗に行う情報操作は民主主義の根幹を揺るがしかねない。

 スイスの有力紙『ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング』は「弓はすでに過剰なまでに張りつめられた」(Es hat den Bogen überspannt)という。イギリスはこれをうまく利用した。

 ロシアの外交官追放に関するオーストリアの事情については、前稿(2018年4月2日「対ロシア制裁『不参加』オーストリアの『複雑な事情』」)で報告した。しかしそれ以外の、追放に同調した国もしない国も、事情はなかなか複雑である。

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