両陛下は初めて与那国島を訪問し、与那国馬を見学された(C)時事

 

 2018年3月、沖縄訪問中の天皇皇后両陛下は、日本最西端の与那国島(沖縄県八重山列島)に立ちよられた。その際、天皇陛下は天然記念物の与那国馬(よなぐにうま)を御覧になり、「ずいぶん小さいね」と、感想をもらされた。

 与那国馬は貴重な在来馬で、体高は1メートルを少し超える程度の小形馬だ。

 実を言うと、「馬と天皇」の間には、強い因縁が隠されている。馬は海人(あま)を介して、王家やヤマト政権と強く結ばれていたのだ。そこで、日本の在来馬について、まとめておこう。

貴重なエンジン

 邪馬台国の記事で有名な『魏志倭人伝』には、「倭国に牛や馬などの家畜はいない」と記録されている。しかし実際には、かなり早い段階で、馬は海を渡っていた。馬の骨は、縄文時代や弥生時代の貝塚から発見されている。遅くとも縄文時代後晩期には日本に渡って来ていたようで、小形馬は中国南部や東南アジア、中形馬は中国北部の万里の長城以北から日本に連れて来られたと考えられている。

 馬は食用ではなく、大切に飼われていたようだ。骨は破砕されず、そのまま出土する。老齢の馬が多く、埋葬されている例がある。

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