中国遼寧省丹東(手前)と対岸の北朝鮮の新義州を結ぶ友誼橋 (C)時事

 

 前回は、北朝鮮とイランの専門家パネルの内側の話を中心に論じたが、専門家パネルが抱える苦労は、パネルの中での合意形成や捜査/査察の問題だけではない。より面倒なのは加盟国とのやり取りである。今回は専門家パネルが国連加盟国とどう付き合っていくのかについて、古川勝久さん著『北朝鮮 核の資金源:「国連捜査」秘録』(新潮社、以下「本書」)で書かれたシーンを参照しながら、イラン制裁専門家パネルから見えた風景を紹介していこう。

「招待」がなければ入国できない

 専門家パネルの仕事は、制裁に関する国連安全保障理事会決議が確実に履行されているかどうかについての情報を収集し、分析するのが仕事だ。それを安保理や制裁委員会(安保理と同じ15カ国で成り立つ事務レベル会議)に提供し、報告書を書くことで、世界に向けて制裁決議の履行の注意を喚起することである。

 一般向けに話をする時にしばしば、専門家パネルは制裁対象であるイランや北朝鮮の国内に入って捜査・査察を行う組織だ、と誤解して質問してくる人たちがいる。

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