タイの混迷はいつまで続くのか

執筆者:湯沢康介2008年8月号

[バンコク発]タクシン元首相の「傀儡」と揶揄されながら今年二月に発足したタイのサマック政権が大きく揺れている。六党から成る連立政権は下院(定数四百八十)の三分の二の議席を占めるが、タクシン氏直系の最大与党「国民の力党」が、憲法裁判所から解党処分を受ける可能性が出てきたのだ。 最高裁判所は七月上旬、同党副党首だったヨンユット前下院議長が昨年十二月の総選挙の際、選挙法違反(買収)を行なったと認定し、有罪判決を下した。 現憲法は「政党幹部が選挙違反を知りながら放置したと憲法裁が認定し、政党の解散を命じた場合、党首や執行役員の被選挙権を五年間停止する」と規定している。 選挙管理委員会は最高裁判決を受け、同党の解党を求める司法手続きを開始する見通し。最終的には、憲法裁に舞台を移し、解党の是非が審理されることになる。 この事態を何とか回避しようと、サマック首相は五月下旬、判決に先立ち、解党規定の削除に向け、憲法改正の動きを本格化させた。これに対し、反タクシン派の市民団体「民主市民連合」は憲法改正に抗議する集会を開始。連日バンコク中心部で「サマックは辞めろ」と連呼しながら座り込みを続け、参加者は一時、約一万人に膨れ上がった。

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