不死鳥――と呼ぶにはさすがにまだ早いかもしれない。だが4月19日、ナゴヤドームで行われた阪神タイガースとの一戦で中日ドラゴンズの先発投手として見せた松坂大輔投手の7回123球、4安打2失点の力投は、復活の兆しを感じさせるには十分だった。ただし、結果は今季2敗目。

 2戦連続で負け投手にこそなったが、前回の初登板に続き、打線の援護を得られない中でも気持ちを切らさずにゲームメーク。強力なタイガース打線を相手に試合終盤のイニングまで“クオリティスタート”の投球内容で凌いだ。かつて「平成の怪物」と呼ばれた全盛期のような力でねじ伏せる投球ではなかったにせよ、再三のピンチにも粘りながら最少失点で切り抜けた。

 今から約3カ月前。今年1月末に自ら売り込んだ中日の入団テストを受けて合格が決まったが、その時点で野球ファンの大半が「どうせ、うまくいくはずがない」と思っていたはずだ。昨季まで3年間、推定年俸3億円という破格契約で福岡ソフトバンクホークスに在籍したものの1軍登板はわずか1試合に終わり、戦力として期待されながら何もできないまま退団。その“トラウマ”があるだけに、所属チームが変わっただけでいきなり復活する姿を想像することは、誰だって難しいに決まっている。しかし松坂は、ここまで懸案だった右肩の痛みを昨オフに完治させ、大方の予想を覆す形でベテランならではの粘投とともに復調を印象付けた。

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