グラスをわしづかみする文在寅大統領とスマートにもつ金正恩委員長。両夫人のファッションにも注目(C)AFP=時事

 

 首脳外交は内容と見かけの2つが重要だ。なぜ見かけも大切なのか。それは巧みなパフォーマンスは交渉の成功を印象付け、首脳らの指導力を見せつける効果があるからだ。板門店で行われた北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅大統領の南北首脳会談は、内容の面では目新しいものはなかったが、見かけの点では大成功だった。

 4月27日、首脳会談を終えた両首脳は、同日午後6時40分から「平和の家」で夕食会に臨んだ。両国合わせて約70人が出席。冒頭、文大統領が高揚感溢れる面持ちで「自由に行き来できるその日のために乾杯!」とシャンパングラスを挙げた。

 この映像を見た私はエッと思った。文大統領はフルートと呼ばれる細身のシャンパングラスの胴体をワシづかみにして杯を挙げ、金委員長のところに行き、ワシづかみのまま杯を合わせたのだ。

 ワイングラスをワシづかみにするのは作法として美しくない。ワインに詳しい私の知り合いの女性は、「文大統領があまりワインを飲んでいないことが分かる」と言った。金委員長との乾杯の後、文大統領は気づいたのか、グラスをテーブルに置き、脚の部分を持ち直して周りの人と杯を合わせた。

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