潜伏キリシタン遺産の一部となっている「原城跡」(筆者撮影、以下同)

 

 世界遺産委員会の諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス、本部・パリ)は現地時間の5月3日午後、弾圧を逃れ、信仰を密かに守り続けた人々が暮らした集落などを含む「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界文化遺産登録を勧告した。西洋から伝来した信仰が禁教期に独自発展し、受け継がれた「文化的伝統」に一定の価値があると判断した。6月下旬から7月上旬にかけて中東のバーレーンで開かれる世界遺産委員会での審議を経て、正式登録される見込み。

 2007年に遺産候補として国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産暫定一覧表に記載されてから約11年。ようやく登録のメドが立ち、観光客誘致など地域振興を当て込む地元関係者は期待に沸き立っているが、潜伏キリシタンが隠れ住んだ集落は過疎化が急激に進み、迫害の歴史に関する人々の記憶も風化しつつある。今なお、潜伏時代の信仰形態を維持する「隠れキリシタン」として暮らす住民の存在など、地域固有の複雑な事情も抱えている。

隠れ続けた人々

「7代後には、司祭が大きな船でやって来る。どこででも大声でキリシタンの歌を歌って歩けるようになる」

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