日立が原発2基を新設する予定のウィルファ原発(C)AFP=時事

 

 安倍晋三首相(63)が成長戦略の1つとしてこだわり続けてきた日本の「原発輸出」。だが、三菱重工業や伊藤忠商事が中心となって計画を進めてきたトルコのシノップ原発、日立製作所が英子会社を通じて手がける英中部ウェールズ地方のウィルファ原発という2つの巨大プロジェクトが、共に撤退の瀬戸際に追い詰められている。

 理由は火を見るより明らか。2011年3月11日の東京電力福島第1原子力発電所事故(いわゆる「フクイチ事故」)後に原発の事業リスクが飛躍的に高まった現実から目を背け、「夢よもう1度」とばかり旧態依然の官民連携で計画を推進してきたからだ。再生可能エネルギー拡大に向かう世界の電力事業の流れは元に戻らない。フクイチ事故の当事者であるにもかかわらず、原発ビジネスが被ったダメージの度合いを見誤った日本の官民は「3.11」から7年の時間を空費したのである。

魅力に乏しい提案

「もっと前に(回答の)期限を切っていたのに……」(日立関係者)

 5月3日、ロンドンのダウニング・ストリート(首相官邸)で英首相テリーザ・メイ(61)と日立会長の中西宏明(72)がウェールズ地方のアングルシー島に建設予定のウィルファ原発について会談した。日本では「英政府、日立の原発譲歩〜2兆円融資を提案」(5月11日付日本経済新聞)「日立、英原発合意へ」(同17日付読売新聞)などと、交渉が前進したように報じられているが、実情は真逆だ。

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