乗っ取り屋ブーン・ピケンズが表舞台に戻ってきた。掲げるのは、米国を縦断する風力発電の回廊建設計画。脱・輸入石油依存を叫ぶがちゃっかり自分の儲けも計算に。齢八十にして挑む人生最後の巨大プロジェクト。[フォートワース発]米テキサス州の伝説の石油王、乗っ取り屋、物言う株主として知られたT・ブーン・ピケンズが、一世一代の大事業に乗り出した。八十歳を迎えて、人生最後の大勝負になるだろうと読んだピケンズは、これを“ほんとうに意味のある仕事”にしたいと考えたようだ。アメリカ経済を救い、米国民の生活水準を守り、おまけに環境保護もできるとあれば、これぞ有意義な事業ではないか、と。 まず、五千八百万ドル(約六十四億円)という巨費を投じて全国的な広告キャンペーンを展開、アメリカが毎年石油の輸入に費やしている七千億ドル(約七十七兆円)を二〇二〇年までに半減しよう、と呼びかけた。だが、彼が国家につきつけた要求そのものに比べれば、ピケンズのキャンペーンは児戯に等しい。 臆面もなく自らの名を冠した「ピケンズ計画」(www.pickensplan.com)とは、米中央部、テキサス州南部からノースダコタ州の北部、カナダとの国境に至る地域に十五万―二十万基の風車を建設し、南北約二千キロ超、東西約百キロの“巨大な風の回廊”を作ろうというものだ。

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