2004年、米テネシー州オークリッジのエネルギー省施設に運び込まれた、リビアの遠心分離器用のアルミニウム管。点検の結果、使用されたものではなかったことが判明した (C)時事

 

 あの時も、確かに情報機関が主導して、「核廃棄」にこぎ着けたのは事実だった。故ムアマル・カダフィ大佐が元気だったころ、リビアで起きた核廃棄のことだ。

 しかし、当時の「成功物語」がいまや、北朝鮮の「非核化」のモデルとしてよみがえり、それに反発する北朝鮮が「米朝首脳会談の再考」まで言い出すことになる、とだれが予想しただろうか。

 ドナルド・トランプ米大統領は5月22日の米韓首脳会談の際、記者団に対して、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が中国の習近平国家主席と5月上旬に2度目の会談をした後に態度を硬化させた、と指摘した。北朝鮮は「リビア・モデル」を口実に利用した疑いがある。

わずか3カ月で核廃棄

 当時の国際情勢をフォローしていた人ならだれでも知っていることだが、そもそもリビアの核廃棄をモデルにして、いまの北朝鮮の非核化に適用することなど、どだい無理な話なのだ。これら2国の非核化で似た点、と言えば、情報機関が主導した核廃棄、ということだけかもしれない。 リビアは確かにパキスタンのA・Q・カーン博士が張りめぐらせた「核の闇市場」からウラン濃縮装置や部品、核弾頭の設計図などを密輸入していた。

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