第2次世界大戦の教訓は、いまの日本で忘れられた

執筆者:野口悠紀雄2018年6月15日
(C)AFP=時事

 

 マネーはあらゆる経済活動の背後にあるが、特に戦時においては、極めて重要な役割を果たす。マネーを増発することによって戦費を調達できるからだ。負担はインフレーションという形で生じるので、政府は返却する必要はない。

 これまで見てきたように、ナポレオン戦争、アメリカ独立戦争、南北戦争を通じて、戦費調達におけるマネーの役割が高まった。

 19世紀に、イギリスがリードして世界的な金本位制が確立され、政府が安易にマネーに頼ることはできなくなった。しかし、金本位制は、第1次世界大戦で停止された。大戦後に復活が試みられたが、成功しなかった。

 それ以降、中央銀行の紙幣は不兌換紙幣になった。こうして、政府は、マネーの発行によって、いかなることもできるようになってしまったのである。

 日本の第2次世界大戦における戦費の大部分も、マネーを発行することで調達された。

 日本国内においては戦時国債、占領地においては軍票が増発され、これによって資源が軍事目的に徴発された。軍票は中央銀行券ではないが、実質的には同じものだ。

 また日本の戦後復興も、事実上の日銀券である復興金融金庫債で資金を調達する傾斜生産方式によって行われた。

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