6月11日夜、突然市内観光に出かけた金正恩党委員長(中央。左はバラクリシュナン・シンガポール外相)[KCNA VIA KNS](C)AFP=時事

 

 史上初めての米朝首脳会談が6月12日にシンガポールで開かれた。会談後に発表された共同声明では、国際社会が注目した非核化について「北朝鮮は朝鮮半島における完全非核化に向けて努力すると約束する」とし、4月27日の南北首脳会談ですでに確認した「完全な非核化」への努力を約束するにとどまり、米国が求めていた「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)は明記されなかった。一方、朝鮮戦争(1950~53年)で銃火を交え敵対関係にあった米朝両国が「新たな米朝関係を確立することを約束する」ことを明記した。

 米朝首脳会談の最大の焦点は、「非核化」と米国による北朝鮮に対する「体制保証」がどのように具体化され、組み立てられるかが注目されたが、抽象的な約束を表明したレベルにとどまり、具体的な内容にも組み合わせにも踏み込むことはできなかった。

 しかし、70年近く敵対してきた米朝両国の最高指導者が、握手を交わして会談をしたこと自体が大きな意味を持ったと言える。むしろ会談後、共同声明には書き込まれなかった米韓合同軍演習の中止や、将来における在韓米軍の撤収について米朝双方から情報が明らかにされ、非核化についてもマイク・ポンペオ米国務長官が「2021年1月までに達成したい」と語るなど、情勢は急速に動き始めた。

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