29年ぶり史上7人目の「偉業」とそれを成し遂げたケプカの爽やかさが救い(筆者撮影、以下同)

 

「成功するか、失敗するか。その差はファインラインだ」

 全米オープンを主催するUSGA(全米ゴルフ協会)は、118回目の開催となった今年の開幕前から、そう言っていた。

「ファインライン」とは、直訳すれば「細い線」。ほんのわずかな差、紙一重の差のことである。

 ニューヨーク州ロングアイランドの「シネコックヒルズGC」が全米オープンの舞台になったのは、今年が5回目。前回開催の2004年大会では、予想外にコースが干上がり、最終日のプレー途中でグリーンに水を撒くという前代未聞の事態となり、「大失敗の全米オープン」のレッテルを貼られた。

「今のなし。もう1球!」という具合に打ち直すショットを、お遊びゴルフにおいては「マリガン」と呼んでいる。今年の大会の開幕前、USGAは「今年はマリガンを打たせてもらう」と言っていた。つまり彼らは2004年大会のコース設定を失敗だったと認めた上で、今年こそはと「打ち直し」ならぬ「出直し」に賭けていた。

 大気中の湿気や気温を計測するための最新機器を採り入れ、広範囲に渡って芝の水分などを把握するためにドローンまで導入。そうやって人事を尽くして天命を待っていたが、その天命、いや天候が、尽くしたはずの人事を瞬時に台無しにしてしまうこともある。コース作りにおいて、最後のサイコロを握っているのは、マザーネイチャー。

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