米軍はアフリカで何をやっているのか

執筆者:篠田英朗2018年6月21日
1992年12月、国連PKO派遣の多国籍軍として、ソマリア・モガデシュ付近の海岸に上陸する米軍兵士。この10カ月後、映画にもなった凄惨な戦闘が発生した (C)AFP=時事

 

 6月8日、ソマリアでアメリカの特殊部隊の兵士が1名殺害された、というニュースが入ってきた。当初は不明であった勢力(数日後に、アル・カイダ系のテロ組織である「アル・シャバブ」が犯行声明)からの攻撃によるものであった。同時にさらに4名の米軍兵士と、ソマリア軍兵士が負傷したという。モガデシュから500キロほど離れた南部の町キスマヨの郊外において起こった事件だった。

「ブラックホーク・ダウン」の苦い失敗

 トランプ政権になってから、ソマリアへの米兵の派遣が急増した。2017年で数百人が派遣され、すでに500名ほどの米兵がソマリアに展開しているとする報道もある。これはジブチとニジェールにおける米軍規模に次いで、アフリカで3番目の米軍展開規模である。

 他地域の米軍の存在と比べれば小規模だと言えるが、歴史的には大きな意味がある。映画『ブラックホーク・ダウン』(2001年公開)でも有名だが、ソマリアでは1993年に米海兵隊員18名が殺害された。しかも遺体が街中を引きずり回される画像が世界に配信されるという衝撃的な事態に至り、当時のビル・クリントン政権は窮地に立たされ、撤収を決断した。就任直後だったクリントン大統領は、国連との距離を定める明確な外交政策を持っていなかった。そのため、屈辱を喫したまま、米国はソマリアから撤退したのであった。

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