著名人の知られざる「台湾ルーツ」を発掘

『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館) 著者・野嶋剛さんインタビュー

執筆者:野嶋剛2018年6月27日
野嶋剛『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)/1620円

 

――本作『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)には、政治家の蓮舫さん、女優の余貴美子さん、作家の陳舜臣さんなど、台湾にルーツを持つ様々な著名人の物語が描かれています。執筆の動機は何だったのでしょう。

 ご本人やご家族が台湾出身であることは知られているけれども、なぜ日本で人生を歩むことになったのかということまでは知られていない。そんな彼らのルーツを辿り、今の活躍の背景にある家族の物語を書きたいと思いました。

朝日新聞の台北支局長として2007年から2010年まで台湾へ赴任していた私は、その間に心に留めていたテーマを、帰国以来、書いてきました。最初に出版したのが、中国と台湾両方に存在する「故宮」の成り立ちに迫った『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)でした。

 そして今回の『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』で、台湾赴任時代に得たテーマは書き切りました。そういう意味では集大成ですね。取材開始から出版まで5-6年といったところでしょうか。

「時代を創った女 ジュディ・オング 日・中・台をつなぐ『血脈と人脈』」(『文藝春秋』2012年5月号)の取材で、ジュディ・オングさんにインタビューしたのが最初です。ここでは詳しくお話ししませんが、驚くべきことに彼女という1人の人間の中に日本、台湾、中国の複雑な関係性が内在していた。つまり、彼女を通して日台中の複雑に絡み合った近現代史が書けるということ。これは1つのノンフィクションになるぞ、と気持ちが高ぶりました。

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