「彼は合意した!」とは「希望的観測」ではないのか(C)AFP=時事

 

 ドナルド・トランプ大統領が、サウジアラビア(以下、サウジ)の国王に電話して、能力一杯の増産を要請したら合意してくれた、とツイートしたと、世界中のメディアが直ちに報じた。たとえば、『日本経済新聞』も電子版で「トランプ氏、サウジに原油増産を要請 最大200万バレルか」(6月30日22:05)と題して伝えた。一大事だ、というわけだ。

 筆者の第一印象は、トランプ大統領のツイートには自らの「wishful thinking」(希望的観測)が混じっているのではないだろうか? たとえば、回りから「サウジの余剰生産能力は200万BD(バレル/日量)」とインプットされていて、サルマーン国王に「精一杯増産してくれ」と頼んだら、国王は「できるだけのことはするよ」と応えた、これを「サウジアラビアに最大200万BDくらいの増産を通じ穴埋めを求めた」ら「彼は合意した!」とツイートした、ということではなかろうか、という見立てである。

 この見方を裏付けるように、サウジ政府は直後に公式声明を発表し、両者は「石油市場の安定と世界経済の成長を維持し、潜在的な供給不足を補うため産油国が努力する必要があることを強調した」と報じた(アラビア語文面を翻訳して報じている中東調査会・村上拓哉氏のツイッターから)。200万BDについてはもちろん、定量的な言及は一切ない。

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