世界に希望を与える「脱・紛争」北アイルランドの活況

執筆者:マイケル・ビンヨン2008年9月号

[ロンドン発]当時のトニー・ブレア英首相とアイルランドのバーティ・アハーン首相が、カトリック系住民とプロテスタント系住民の間で続いていた紛争に終止符を打つ和平合意を結んだのは、一九九八年四月十日。 あれから十年、歴史的和解は実を結んだ。北アイルランドの中心都市ベルファストはかつてない活況に沸いている。投資がなだれ込み、巨大なテクノロジーパークが建設され、レストランや店は観光客と地元住民で賑わっている。さらに、宗教対立の解決策を求める国や地域にアドバイスを与えるまでになっている。 もちろん、和平合意からすぐに平和の配当が出たわけではない。グッドフライデー合意(四月十日がキリスト教の聖金曜日だったことから、こう通称される)ができても、政治家同士の不信感は容易には拭えず、政治環境が整わないために外部からの投資も滞った。しかも、イギリスからの分離を求めて武装闘争をしてきたカトリック側のIRA(アイルランド共和軍)の政党であるシン・フェイン党が自治政府庁舎からテロに利用できる秘密文書を不正入手したことが発覚し、和平合意は危機に陥った。そこでロンドンは再び暫定的な直轄統治に乗り出し、北アイルランド自治政府がようやく再稼働したのは昨年五月のことである。

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