改造で「裂党態勢」を築いた福田首相の無自覚

執筆者:野々山英一2008年9月号

やっとのことで改造はしたものの、政権の求心力は衰えるばかり。公明党は増長し、「上げ潮派」は“四十日抗争”を予告する。 福田改造内閣が発足して四日目の八月五日、自民党本部で党役員会が開かれた。この席で、党総裁でもある福田康夫首相は、新執行部に対し、党が今後取り組むことの基本方針を示すはずだった。 ところが、福田氏の発言は「暑いですねぇ」で始まり、あたりさわりのないあいさつで終わった。新政調会長の保利耕輔氏は会議後、「首相の発言で、印象に残る言葉はなかったなあ」と半ばあきれ顔で感想を漏らした。保利氏だけではない。新役員は、福田氏が何のために人事を断行したのか、新しい執行部のもと何をやろうとしているのか、全く読み取れなかった。 先の日銀正副総裁人事の際、「人事下手」ぶりをいかんなく発揮した福田氏が手がけた初の内閣改造・党役員人事。最終局面まで内容を明かさない秘密主義は、小泉純一郎元首相の手法に似ている。だが、そこから出てきたものは小泉流サプライズとはかけ離れ、稚拙で無思想なものだった。そして人事の目的だったはずの「選挙に勝てる体制づくり」に向けても逆効果となった。小さなプラスと引き換えに 今の自民党にとって、最大の関心事は、遅くとも来年九月までに行なわれる衆院選での生き残りだ。三百超の現有議席維持は不可能としても、せめて二百二十議席程度を確保し、与党の座にしがみつきたい。

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