来年の総選挙に向け政党活動が活発化するインドネシアのアチェ州で、今また緊張が高まりつつある。スマトラ島西北端にあるアチェ州は国からの分離独立を求めて武装闘争を行なってきた独立派組織「自由アチェ運動(GAM)」の拠点。紆余曲折を経て二〇〇五年八月に政府と和平合意に達し、同国では特別に地方政党の設立と地方選挙への参加を認められた。 そのアチェのブサール県で九月九日、地方政党「アチェ党」のムザキル・マナフ党首の自宅に手榴弾が投げ込まれる事件が起きた。ムザキル党首はGAMの司令官で、和平合意前にはインドネシア国軍の「暗殺対象リスト」のトップに名を記されていた。アチェ党は住民の強い支持を受けていることから、来年の総選挙では躍進が見込まれており、政治的背景がある爆弾テロとの見方が強まっている。 ムザキル党首と家族は外出中で負傷者は出なかったが、アチェではGAM系の政党や組織を狙った放火や暴力事件が昨年来続発。国軍や治安当局関係者が背後にいるとも囁かれ、総選挙に向け、再び治安が悪化するのは確実視されている。 一方、スウェーデンに逃れてアチェ亡命政府を率いたGAMの最高指導者、ハッサン・ティロ氏のアチェ招待が具体化する気配もあり、こうした動きへの牽制との見方も出ている。

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