投信“全滅”でゆうちょ銀行の泣きっ面

執筆者:清水常貴2008年10月号

 十月一日に民営化一年を迎える「ゆうちょ銀行」が投資信託に頭を抱えている。株価下落で運用状況がほぼ壊滅状態なのである。一万円を基準にして運用成績を示す「基準価額」は軒並み一万円割れに陥り、窓口に相談に来た客には「損失が出ている」と答えざるを得ないのだ。 たとえば、ゆうちょ銀行が販売している十六本の投信のうち、住信アセットマネジメントが運用する「住信日本株式SRI(社会的責任投資)ファンド」の基準価額は六千七百四十三円(九月十日現在)。投資した一万円が六千七百四十三円に減り、三千二百五十七円の損失が出ている勘定になる。投資が百万円なら損失はその百倍だ。 ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントが運用する「GS日本株式インデックス・プラス」も基準価額は七千四百二十円だし、フィデリティ投信の「フィデリティ・日本配当成長株投信」も七千六百四十六円。つい最近まで一万円を超えていた野村アセットマネジメントの「野村世界6資産分散投信(安定コース)」も九千九百十円に落ち込み、十六本すべてが基準価額割れ。ゆうちょ銀行員が青くなるのも当然である。含み損を知らない人も「貯蓄から投資へ」の掛け声に乗って、郵政公社時代の郵便局が全国の郵便局から選りすぐった五百局で投資信託の販売を始めたのは二〇〇五年十月。当時、証券界では「二百兆円を超える郵便貯金の一〇%が株式市場に流れるだけでも二十兆円。平均株価二万円超えは確実」と期待されたものだった。その後、投信を販売する郵便局は増えつづけ、現在は二百三十三の直営局を含めて千五百五十二の郵便局で販売している。

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