フィリピン人介護士は日本を見限るのか

執筆者:出井康博2008年10月号

 八月七日、二百名余りのインドネシア人介護士・看護師が来日した。介護・看護分野で日本が初めて受け入れる外国人労働者とあって、当日の成田空港には大勢の報道陣が詰めかけた。今後は、半年間の日本語研修を経て、国内の介護施設や病院で仕事を始めることになる。 介護士らの来日は、日本がインドネシアと結んだ経済連携協定(EPA)に基づく「国家プロジェクト」だ。その行方に注目が集まる一方、EPAとは無関係なところで外国人介護士の受け入れが進みつつあることはあまり知られていない。 外国人介護士が日本で就労しようとすれば、EPAの枠組みしか方法はないはずだ。なぜ、受け入れが可能なのか――。 名古屋市でリハビリ病院や老人保健施設を運営する医療法人財団「善常会」は、来年初め、フィリピンから四人の介護士を受け入れる。「欧米先進国の介護現場は、すでに外国人労働者が支える状況になっている。人手不足が著しい日本も、やがてはそうなっていくに違いない。ならば早い段階で外国人を受け入れ、今から学習しておこうと考えたのです」(善常会の若山雅博事務局長) フィリピンもインドネシア同様、EPAを通じて介護士・看護師を送り出すことを日本と合意している。だが、早ければ昨年秋にも実施が見込まれていた送り出しは、フィリピン上院の批准拒否によって現在まで目途が立っていない。

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