ワイン人気に乗じて取引ハブ目指す香港

執筆者:渡辺靖仁2008年10月号

 香港が今年二月、輸入ワインへの四〇%の関税を撤廃したのを機にアジアのワイン取引の拠点となることを目指している。八月には世界有数のワイン生産国フランスと香港の両政府が取引拡大を目指して互いに協力するとの覚書に調印した。世界の取引拠点であるロンドンやニューヨークの市場関係者も香港に注目し始め、香港ではオークションや見本市などワイン関連のイベントも続いている。 ワインの国際見本市ビネクスポは、本場ヨーロッパで年々ワインの消費総額が減少する一方、日本を除くアジアの消費総額は二〇〇七年の七十億ドル(約七千五百億円)から一二年に百七十億ドル、一七年には二百七十億ドルになると推計する。香港貿易発展局は、消費拡大に乗り香港の取引基地としての地位が確立されれば、経済効果は一二年に一億香港ドル(約十四億円)に達し、一七年には約三十億香港ドルに膨らむと見込む。 世界の市場関係者が香港に注目する最大の理由は、ワイン人気が続く中国本土への売り込み拠点としての潜在力だ。中国の宴会といえばアルコール度数の高い蒸留酒を競い合うように飲み干すというイメージも強い。しかし近年では健康志向も手伝って、ワインが人気を伸ばし、今では中国料理とワインの組み合わせは当たり前になっている。中国で消費されるワインの大半は国産で、輸入ワインが占める割合はまだ数%にすぎない。それでも富裕層を中心にブランド志向が高まっており、中国税関当局のまとめによると、輸入ワインの総額も〇六年の七千七百万ドルが〇七年には一億八千四百万ドルに増えている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。