米国の首都ワシントンDCで人気を博している観光スポットが「国際スパイ博物館」だ。今年四月に開館したニュースの博物館「ニュージアム(Newseum)」と並んで、首都の再開発と活性化を担っている。二つの博物館とも民間主導で進められ、集客能力の向上に余念がない。 二〇〇二年七月にオープンしたスパイ博物館は、FBI(連邦捜査局)本部やチャイナタウンから徒歩圏内にあり、地下鉄の駅も近い。開館から六年の今年、入場者が四百万人を突破した。来場者のお目当ては本物のスパイ道具。第二次世界大戦時から冷戦時代に開発され、本や映画でしか見ることができなかったスパイ道具の実物を、この目で確認できる醍醐味がある。 たとえば、第二次大戦中にドイツが導入した暗号マシーン「エニグマ」、冷戦時代にソ連の諜報機関KGB(国家保安委員会)が開発した盗聴器、ハンドバッグや建物の壁に組み込んだ盗撮用カメラ、女性エージェントが携帯していた口紅型ピストル(弾丸は一発のみ)、有毒ガス弾を発射する小型拳銃(タバコケース収納のタイプ)、バイオリンなど楽器のケースに収納したライフル銃などなど。映画007シリーズに登場したスパイ道具さながらだ。シリーズ中の傑作『ゴールドフィンガー』に使われた英国製の防弾特殊車アストン・マーチンDB5も、堂々と飾られている。お馴染みのテーマソングが流れ、「JB007」のナンバープレートが回転し、ヘッドライト付近から機関銃が射撃音とともに飛び出すなど、サービス満点だ。

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