三菱UFJ「モルガン出資」の後悔先に立たず

執筆者:大神田貴文2008年11月号

払い込み直前まで大激論。出資条件を変更したことからも、内部の“揺れ”が見てとれる。モルガンの業績回復を天に祈って……。 景気が底割れし、株価が急落。大手金融機関が次々と外資の手に落ちる……。今の米国の姿と数年前の日本には、どこか重なる点が多い。日本はバブル崩壊後、ハゲタカに食い荒らされてきただけに、「ようやく攻守が入れ替わった」と溜飲を下げる金融マンは少なくない。しかし、事情はそれほど単純ではなかろう。 倒産した米リーマン・ブラザーズは野村ホールディングスがアジアや欧州・中東部門を買い取った。価格さえ算定できない証券化商品など資産は一切引き継がない一方、リーマンの看板を残し、野村社内の反発を覚悟しながらも、リーマン社員に厚待遇を保証した。買ったのは「人材」だという。 一方、三菱UFJフィナンシャル・グループは米国の名門証券、モルガン・スタンレーへの大口出資を決めた。三菱UFJは最終的に筆頭株主としてモルガン株の二割を保有。連結決算の「関連会社」に位置付け、持ち分法適用対象にする。野村も三菱UFJも投資銀行業務のノウハウ獲得を掲げるが、この二件は全くと言っていいほど異質だ。「落ちてくるナイフをつかむな」とは、下落途中の株を買うリスクを表す米国の相場格言だ。これに当てはめれば、野村が手にした倒産後のリーマンは、さながら床に刃先の刺さったナイフだろう。一方、三菱UFJはまさに落下途中のナイフに手を出し、モルガンをつかんだ。怪我はないのだろうか。

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