バングラデシュの首都ダッカにあるサウジアラビア大使館で九月半ばに開かれた夕食会に、バングラデシュの政治家らと共にモウヒディン・アハメドが招待されていたことがわかり、憶測を呼んでいる。モウヒディンは一九七五年八月のクーデターの際に、バングラデシュ「建国の父」である初代大統領ムジブル・ラーマンとその親族十五人を射殺した実行犯グループの一人とされる人物だ。 しかし、当時少佐だったモウヒディンは暗殺事件の後、クーデターで成立した政府によって大使に任命されサウジアラビアに派遣されていた(政権交代後バングラデシュから身柄引き渡し要求があったが応じず、事実上サウジが匿まっていた)ことを考えると、大使館による今回の招待も不思議ではない。その後、モウヒディンは七年近くアメリカに身を潜めていたが、昨年カリフォルニアで拘束されダッカに移送されて、現在裁判を待つ身だ。 そんな人物を敢えて招いたのは、今年十二月十八日に予定されるバングラデシュの総選挙を前に、有力政党のアワミ連盟(AL)にサウジアラビアが揺さぶりをかけて、サウジ寄りのバングラデシュ民族主義党(BNP)に勝たせようとしているからだとの見方がある。BNPは最大勢力だが、バングラデシュは現在、選挙管理内閣による暫定政権の下にあり、国会は機能していない。前回二〇〇一年の選挙で僅差の得票率二位だったALはムジブル・ラーマンが作った政党で、現党首はラーマンの娘で事件当時ドイツにいて命拾いしたシェイク・ハシナ・ワゼド元首相だ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。