給料の半分近くを抜き取られるのが現在の人材派遣の実態だ。派遣先の大企業の責任も重い。 物流倉庫が建ち並ぶ千葉県市川市の東京湾岸。いつもJR京葉線の駅前で客待ちをする地元のタクシー運転手は、昨夏、異様な光景を何度も目にした。夜七時半ごろ、大型トラック二台が現れると、集まっていた約七十人の労働者が黙々と二台のコンテナに乗り込んでいく。日雇い派遣大手のグッドウィル(その後、廃業)に登録する派遣労働者だった。 彼らは約二キロ離れた倉庫で、夜九時から翌朝五時まで商品の仕分けをしていた。帰りも駅までトラックで運ばれた。「人として扱われていなかった」とタクシー運転手は言う。道路交通法に違反したコンテナ詰めの送迎は約二カ月続いたという。「廃材撤去と聞いて現場に行ったら、派遣労働が禁じられている危険な解体作業だった」「倉庫での作業中に手の指を骨折し、労災保険を申請しようとしたら、派遣会社から『労災を使うと仕事が来なくなるぞ』と脅かされた」――。日雇い派遣労働者がぞんざいに扱われる事例は枚挙にいとまがない。 ワーキングプア(働く貧困層)や「ネットカフェ難民」などの温床とされる日雇い派遣について、政府は開催中の臨時国会で、原則禁止に向けた規制強化を目指している。きっかけは、警視庁が摘発したグッドウィルの二重派遣事件だった。

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