[ジャカルタ発]「インドネシアはポストBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の最有力候補だ」。来年夏の大統領選を控え、元インドネシア商工会議所会頭のアブリザル・バクリ国民福祉担当調整相(六一)が存在感を高めている。 一九九八年のスハルト政権崩壊で経済が停滞、ASEAN(東南アジア諸国連合)の盟主の座から滑り落ちたインドネシア。しかしバクリ氏は、石油、天然ガス、石炭などの豊富な天然資源、そして二億三千万人(世界第四位)の巨大市場をテコに、中国、インドに次ぐアジアの新興経済大国にのし上がれるとしきりに主張している。 バクリ氏は現在、ユドヨノ大統領、カラ副大統領に次ぐ政権ナンバー3。同国最大の資源企業を率い、その膨大なマネーを武器に次期大統領のイスを虎視眈々と狙う。 地元経済誌「グローブ・アジア」によると、二〇〇八年のバクリ氏の個人資産は前年比九倍の九十二億ドルとなり、国内のみならず、東南アジアでもトップ。現在は世界的な金融不安で株価は下落傾向だが、彼が実質的オーナーである企業群がこの一年で急成長したのは事実だ。資源最大手のブミ・リソーシズは今年六月に時価総額が一年前の三・七倍の百六十四兆ルピア(約一兆九千六百億円)となり、国内で首位。複数の石炭生産会社を保有し、それらの会社が石炭価格の高騰で増収増益となったためだ。インドネシアは今や一般炭(発電用石炭)でオーストラリアを抜き、世界最大の輸出国の地位にある。このほか同氏のビジネスは石油や天然ガス、鉄鋼、不動産、通信、パーム油など幅広い分野に跨っているが、資源分野が価格高騰で大幅増益を記録、アジアの新資源王といわれる存在になっている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。