金融恐慌の色彩が強まってきた欧州で、金融王国としての歴史を誇ってきたスイスの行方が注目されている。 今回のサブプライムローン問題ではスイスの銀行最大手のUBSが昨年上期に大幅な損失を計上し、最高経営責任者(CEO)だったペーター・ウフリ氏が辞任。その後、損失は四兆円を超え、今年春には最高権力者として君臨してきたマルセル・オスペル会長も退任に追い込まれた。 それでも疑念は消えず、一般スイス国民の間にまでUBSの破綻を懸念する声が広まっている。二大銀行の一方であるクレディ・スイスのサブプライム関連損失が一兆円以下に留まっていることから、クレディ・スイスや、スイスに古くから存在するプライベートバンクにUBSの資金が流出している模様だ。 そこでスイス国内で囁かれているのが、UBSとクレディ・スイスの合併だ。両者が一体になることで信用不安が沈静化するとの見方がある一方で、連邦政府や金融界の関係者は、国内の大金融機関が一社だけになることを懸念しているとも言う。 UBSは投資銀行部門と投資信託事業部門、ウェルスマネジメント部門の三つから成り立っているが、今回の問題発覚後、三部門の独立性を高める組織改編に踏み切った。火だるまの投資銀行部門を事実上切り離すことで、富裕層の資金を預かっているウェルスマネジメント部門への波及を食い止める狙いだ。

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