グルジアを弄ぶロシア・ハンド

執筆者:名越健郎2008年11月号

 8月8日の北京五輪開会式と並行して始まったロシアとグルジアの戦争はロシアの勝利に終わり、メドベージェフ大統領はグルジア領南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立を承認すると宣言した。兵力で圧倒的優位に立つロシア軍は、スターリンの故郷ゴリを蹂躙したほか、グルジアの17カ所を空爆。グルジア軍は敗走した。 戦時愛国主義が燃え上がるロシアのネットブログは先制攻撃したサーカシビリ・グルジア大統領を「ブッシュのプードル」「ヒトラー」などと糾弾。「強いロシア」を賛美し、欧米従属や経済危機に打ちひしがれた1990年代の屈辱を一気に晴らそうとしているかにみえる。狂気の大ロシア主義の中で、健全な精神はアネクドートの世界だけに残っている。 サーカシビリ大統領が自室にこもり、マスターベーションをしていると、オランダ人の夫人がそれを見つけて仰天した。「あなた、何てことしてるの」「……違う。この手は俺の手じゃない。ロシアの手だ」 プーチン首相がグルジア軍の攻撃で蹂躙された南オセチア自治州に100億ルーブル(約500億円)の復興支援を提供すると発表した。 これを知ったロシア最貧州・イワノボ州の知事がサーカシビリ大統領に電話した。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。