投資銀行を気取った農林中金を始め、系統金融機関が法律による“救済”の対象に加えられた。金融界の闇の奥には何があるのか――。 世界的な金融危機の中で、日本の金融システムの構造的なモロさが、再び露呈してきた。欧米の金融機関が相次いで流動性や資本の不足に陥り、公的資金の注入を受け入れているのを横目に、「相対的には日本の金融システムは健全だ」と麻生太郎首相は言い続ける。果たしてその言葉は真実なのか、それとも危機の引き金を引かないための方便なのか。日本の金融界に垂れ込めた闇は一段と深まるばかりだ。 十月二十四日、金融機関に対する予防的な公的資金の注入を可能にする「金融機能強化法案」が閣議決定された。サブプライムローン問題に端を発した今回の金融危機が「百年に一度の津波」であることが世界の共通認識となった主要七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)から二週間。米リーマン・ブラザーズ破綻から一カ月余りという、日本としては異例の速さの法案提出だった。 金融機能強化法はもともと存在していたが、三月に期限が切れていた。渡辺喜美・金融担当大臣(当時)は存続を主張したらしいが、体力の弱い地方銀行の再編を想定した同法を存続させると「どこかまずい地方銀行があるという印象を国民に与え、危機を煽りかねない」との事務方の主張に押し切られたのだという。すでにサブプライム問題が深刻化していた中で、「先が読めない」金融当局のお粗末ぶりを証明している。それと同時に、問題は存在しないとさえ言えば、現実の危機は目の前から消え去る、と考える日本の官僚特有の行動パターンが透けてみえる。

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