タイ陸軍がロシア製多目的ヘリコプター「Mi17(ミル17)」を六機導入する方針を決めた。タイ陸軍がロシア製のヘリコプターを調達するのは初めてで、これまでタイ軍に主要兵器を売却してきた米軍需産業やタイ軍と良好な関係を保つ米軍関係者などが、背景や真意を探る動きを活発化させているという。 タイ陸軍のアヌポン司令官はロシア製ヘリ導入の理由として、「価格が手頃なこと、タイ軍のニーズに合致していること」を挙げている。確かに、タイ陸軍が以前導入を検討していた米シコルスキー社製の「UH60(ブラックホーク)」に較べると、Mi17は三分の一の価格ながら搭載人員は三倍と「お得な買い物」ではある。しかし、Mi17は初飛行一九七五年の旧式のヘリコプターだ。 このため、九月に誕生したソムチャイ内閣で一時は副首相に返り咲いたチャワリット元陸軍司令官の存在が今回の決定に影響したとの観測が出ている。 チャワリット氏はタイ騒乱を受け十月初めに副首相を辞任したが、九六年に首相を務めるなどタイ政界、特に陸軍への発言力が強く、一方で国家汚職防止法違反に問われ現在英国に逃亡中のタクシン元首相に近い人物だ。それだけに、米政府から三行半を突きつけられたタクシン氏の「嫌米」が前副首相を通じて陸軍首脳に伝わり、ロシア製ヘリコプター調達につながったとの見方が強まっている。

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