上場企業の二〇〇八年九月中間決算発表には「二つの締切」があった。一つは東京証券取引所が努力目標として示す十月三十日、もう一つは決算期末から四十五日以内の開示を義務付ける金融商品取引法に則った十一月十四日だったが、前者に間に合わない企業が続出した。「期末から三十日以内」に一日遅れの十月三十一日には約二百三十社が決算発表。各企業の経理担当者は一様に会計事務の煩雑さを指摘し、東証の要請には応じにくいと逃げを打つ。 一方で、公認会計士試験(論文式)の合格発表が十一月十八日にあり、今年も会計士が大勢生まれる。前年の〇七年度試験では合格者数が二千六百九十五人と倍増。各監査法人が〇六年、日本版SOX法導入で仕事が増えることを見越し報酬を増やしてまで新人獲得に走った反動もあって、〇七年は監査法人への就職にあぶれる合格者も出た。今年の合格者も楽観できず、難関資格の有難味は薄れる一方だ。 巷には余るほど公認会計士がいるのに決算作業のスピードアップがままならないのは、監査報酬が頭打ちのためだ。日本では、外部監査に年一億円超のコストを掛けるのはソニーなど数社にとどまると言われる。コストを抑えられたら、担当の会計士の数は増やせない。一方で、四半期決算の導入以降、事務量が格段に増えた上、手を抜けば刑事罰の対象になりかねず、監査の質は落とせない。公認会計士は「カネは増やさないが質を維持してスピードアップを」と要求されているのだ。

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