グルジアでは、この日に奇妙な事件が起きる。 今年八月八日、そう実感した。この日、グルジア軍が南オセチア自治州に進攻、ロシア軍との交戦が始まった。だが、十五年前のこの日、もっと不可解な事件が起きていたのである。 フレッド・ウッドラフ氏(当時四十五歳)。米中央情報局(CIA)のトビリシ支局長だった彼が頭部を撃たれ即死したのも、一九九三年のこの日だった。同年九号の本欄でもこの事件について触れた。 犯人が逮捕されたのは事件から数時間後。グルジア情報機関は、殺人の疑いで逮捕したアンゾル・シャルマイゼ(現在三十六歳)が「酔っぱらってAK47を乱射した悲劇的事件」と断定。シャルマイゼは翌年、有罪判決を受け、服役していた。 ところが、米大統領選の十一日前の今年十月二十四日、突然シャルマイゼ受刑者が仮出所を認められ、山間部にある自宅に戻ったのだ。 シャルマイゼ元受刑者は、この時期に一体なぜ、自由の身になることができたのか。 意外にも、シャルマイゼ元受刑者の仮出所をウッドラフ氏の実姉ジョージア・アレグザンダーさんや彼女の弁護士マイケル・プララ氏は歓迎している。 実は、遺族と弁護士はシャルマイゼ犯行説を疑い、事件の再捜査をグルジア政府当局に求めてきた。受刑者の仮出所で、事件の真相解明に弾みがつくと期待しているのだ。

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