EUが義務づける「ひとりでに消えるタバコ」

執筆者:シルヴィオ・ピエールサンティ2008年12月号

[ローマ発]欧州連合(EU)は、二〇一一年までに、域内で販売されるタバコをすべて「自動消火」型に切り替える方針を固めた。これにより、欧州では少なくとも年間二千人の人命が助かると期待されている。 EUが公表した最近の調査結果によれば、現EU加盟国二十七カ国のうち十二カ国に非加盟のアイスランドとノルウェーを加えた国々では、二〇〇五―〇七年にかけて寝タバコによる火災が年間一万一千件も発生し、犠牲者の数は死者五百二十名、重傷者千六百名に上った。現在調査中の残り十五カ国でも、これを上回る数字が出ると見られている。「タバコメーカーに“自動消火タバコ”を義務づけることで、EU域内では多くの命が救われ、何千もの人々が重傷を負わずに済むようになる」と、消費者保護問題担当の欧州委員メグレナ・クネワは語る。 タバコが原因となった火災では、死者の五人に二人は非喫煙者であり、子供が親の喫煙の犠牲になるケースが多い。喫煙中に寝込んだり、突然具合が悪くなり意識を失ったりして吸いかけのタバコがベッドやソファに落ちると、その火は密かにくすぶり続け、ときには三十分もたってから出火することもあるという。 フィンランド政府によれば、同国ではタバコによる火災が年間約七百件に上り、四十人が命を落としている。人口五百万程度の国としては驚くべき死者の数だ。これを日本の人口に置き換えれば、犠牲者数は約千人になる(〇六年、タバコを出火原因とする住宅火災の日本の死者数は二百二十六人だった)。

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