人類最大の脅威となりかねない新型インフルエンザ。対策には国際協力が不可欠だが、浅はかなスパリ保健相がそれを阻んでいる。[ジャカルタ発]二十一世紀の人類にとって最大の脅威といわれる感染症、新型インフルエンザ。アジアの途上国を中心に感染が拡大しているH5N1型の鳥インフルエンザウイルスが変異を起こし、人から人に感染する新型インフルエンザが発生すれば、「全世界で最大一億五千万人が感染死する」(国連予測)とも言われている。 インドネシアはこれまでの鳥インフルエンザの感染死者数で全世界の四割強を占めるもっとも危険な国。しかしそれ以上のリスク要因が、保健行政のトップである女性大臣、ファディラ・スパリ保健相(五九)の存在だと言われている。 インドネシアでは二〇〇五年夏に初めてH5N1型の感染死者が発生、首都ジャカルタを中心に拡大した。インドネシアは中国に次いで鶏の数が多く、約十三億羽が飼われている。街の中で放し飼いにされているケースもあり、鶏から人に感染している。致死率は実に八割を超え、すでに百十二人が死亡している。 当初、保健省は世界保健機関(WHO)にウイルス検体を送って、感染の有無や詳細を確認していた。しかし、〇六年末にスパリ保健相を激怒させる事件が起きた。予防ワクチンはウイルスを元に開発されるが、WHOがこのウイルスを第三国の先進国に提供し、ワクチン開発を進めていることが発覚したのだ。

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