中国は十五億人を食べさせられるのか

執筆者:藤田洋毅2008年12月号

これからまだ「二億人の農民」が増える国。豊かになった都市部との「両極分化」を放置したままでは……。「車が通りかかったら立ち止まって敬礼せよ」――中国貴州省黄平県の教育局が、県下の全小中学生に下した指示が話題になっている。地元紙が、記者が乗った車に向き直立した児童らが右手を頭の上に高く掲げる、いわゆる少年先鋒隊の隊礼式敬礼に同県全域で出くわしたと写真付きで報じたのが発端だ(十月十三日「貴州都市報」)。県教育局は二〇〇四年から取り組んでおり「すでに習慣化した」「狙いは第一にドライバーへの尊重を示す礼儀教育、第二に交通事故防止」と説明した。報道はまたたく間に他媒体に転載され、ネットでは議論が湧き起こった。 県教育局や賛成派は主張する。ドライバーは注意を喚起され慎重になる。山間地の黄平県でも車が増え、以前は登下校の子供を巻き込む死傷事故が起きたが、敬礼を始めて以降、「死亡事故は一件も起きていない。保護者の多くも支持している」と。 反対派は、行政が命じるべき範囲を逸脱しており、黄色い帽子の配布など別の事故防止策を考えるべきと訴える。運転者はハンドルを握ったままなのに子供だけがなぜ礼を示さねばならないのかとも問う。なにより、まだ貧しく車が富と権力の象徴である黄平県の子供に敬礼を命じるのは、「幼い頃から奴隷根性を植え付ける最悪の教育」と批判する。「新聞晨報」のネット調査では反対派が八割に上ったという(十月十七日)。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。