果てしなきドイツ政治の混迷

執筆者:金井和之2008年12月号

[ベルリン発]「ついにCSU(キリスト教社会同盟)の神話も終わったな……」 保守の牙城・独バイエルン州にだけ地盤を置き、連邦(国家)レベルではメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)と保守の統一会派を組んで大連立政権を支えるCSUの関係者は、長い吐息を漏らした。 九月末に実施されたバイエルン州議会選挙。与党CSUは苦戦を強いられ、一九七〇年から続けてきた単独過半数を維持できず、六二年から守り通してきた単独政権からも滑り落ちた。来年秋に控える連邦議会選挙(総選挙)の前哨戦として注目されていただけに、社会民主党(SPD)との大連立解消を狙うメルケル首相にとっては痛手となった。 昨年秋、長年にわたりCSUの頂点に君臨してきたシュトイバー氏が、側近のスキャンダルの責任を取らされた形で、党首と州首相を辞任した。CDU/CSUの顔として連邦レベルでも首相候補として戦ったカリスマを失い弱まる党の結束力を、今回の選挙で証明されてしまった。結局、同州では自由民主党と連立政権を組むこととなり、州首相と党首は引責辞任。後任には、連邦政府で消費者保護・食糧・農業相を務めるゼーホーファー氏が選ばれた。CSUの再建、そしてメルケル首相再任に向けて重要な鍵を握る人物だ。

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