すべての金融機関を「税金」で救うべきなのか

執筆者:大神田貴文2008年12月号

「経営責任は問わないから」と猫撫で声の金融庁。そうまでして救済しても、一時しのぎにしかならないのが現実だ。 このままでは来年三月期末を乗り切れない金融機関が続出し、自分たちに批判の矢が飛んでくる。そう考えた金融庁は、世界的な株価暴落を口実に、破綻しそうな金融機関へ表玄関から大手を振って公的資金すなわち税金を運び込む道具立てを用意している。 地方金融機関の経営危機はサブプライム問題や株安といった今秋の大混乱のせいではなく、慢性的な地域経済の衰退を反映しているに過ぎない。ただ、今までの延命策が無駄だったとは言えず困り果てているところに、金融庁にとっては都合よく株価が大暴落した。 十月十四日朝、米国の首都ワシントンでのG7(先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議)から帰国した中川昭一財務・金融相が、金融危機の沈静化に向けた日本の「行動計画」を発表した。その中には、中小企業対策と称して、世界金融安定化とおよそ無関係な金融機関への公的資金投入が盛り込まれた。政府はいそいそと金融機能強化法すなわち金融機関への税金投入法の復活作業にかかり、十一月六日に衆院を通過した。 担当大臣は旧日本興業銀行出身で自称「経済通」の中川氏。事務方は「面倒な自民党サイドへの根回しが簡単に片付く」と“僥倖”を喜んでいる。

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