特に気に留めていなかった発言が、あとから思い返してみると重要な意味を持っていたことに気付かされるというのはよくあることだ。十月十四日夜、東京・虎ノ門の「虎ノ門パストラルホテル」で開かれた自民党町村派の若手、西村康稔衆院議員のパーティーでの同派最高顧問、森喜朗元首相のあいさつもそうだった。森氏の前に壇上であいさつしたのが細田博之幹事長だったのだが、森氏は細田氏の方をチラリと見ながら、こう言った。「細田さんは先週、麻生太郎首相と会われているはずです。なかなか、この幹事長はしぶといですからね」 集まった一般参加者も取材のために会場入りしていた政治部記者たちも、その時点ではこの発言の重要性に気付かなかった。それよりも、森、細田両氏をはじめ、町村信孝前官房長官、安倍晋三元首相ら居並ぶ町村派幹部たちが次々と早期解散の可能性に言及したことが印象的だった。それが、選挙基盤の弱い若手議員を多く抱える町村派が解散風をあおっているのだろうという報道につながっていった。 森氏が、麻生―細田会談があったと指摘した「先週」というのは、十月五日から十一日までの一週間のことだ。この期間の麻生首相の動向を調べてみると、どの新聞の「首相動静」欄にも、麻生首相が細田氏と会ったという記述はない。

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