謎に包まれた「ソマリアの海賊」の正体に迫る

執筆者:竹田いさみ2009年1月号

日本の艦艇の派遣も議論され始めた。われわれはまず正しい情報を得なければならない。 あまりにも“洗練”された手口ではないか――インド洋やアフリカ北東部のアデン湾を荒らし回っているソマリア海賊の印象である。漁船などを改造した母船に小型の高速艇を積み込み、海岸からはるか数百キロ沖合いの海上で、大型の貨物船や原油タンカーを襲撃し、シージャックする。二〇〇八年だけで一億二千万ドル(約百十億円)の身代金を掌中に収めたと国連は発表している。 この海域は日本とヨーロッパを結ぶ大切な貿易ルートで、一年間に二万隻の貨物船や客船が行き交う。インド洋からスエズ運河を通って地中海に抜ける際の「関所」とも言うべき海域が、ソマリア沖のアラビア海やアデン湾だ。日本企業が所有・管理している約二千隻の船舶もここを通航し、ソマリア海賊の襲撃と無縁ではいられない。 実際、〇八年四月には日本郵船の大型原油タンカー「高山」が、海賊の発射したRPG携帯型ロケット砲で被弾し、損傷した。蛇行操船をしながら逃げ、ドイツ海軍艦艇が現場に急行してくれたお陰で難を逃れている。また、九月には日本が運航を管理するタンカーが襲撃され、十一月には中国漁船に乗っていた日本人船長らが人質になる事件も起きた。未遂事件も入れると日本関係船舶への襲撃は二桁を超えるという。

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