ソマリアとイエメンの沖合中心に活発化した海賊が、国際政治の焦点となっている。六月の国連安保理決議一八一六に基づきインド、ロシア、南アフリカ共和国、アメリカ、NATO(北大西洋条約機構)などの艦船が派遣され、アデン湾やソマリア沖での警戒活動に当たる。EU(欧州連合)も、初の海軍共同作戦を開始した。(13頁に関連地図) では、中東諸国はどのように対応しているのだろうか。中東諸国にとっても、この問題は重大な関心事のはずである。スエズ運河の通航料はエジプトの主要な外貨獲得源である。紅海の出口が海賊の多発地帯となっており、危険を避けて南アの喜望峰回りにルート変更する動きは国家財政への打撃となる。 十一月十五日にサウジアラビアのタンカー「シリウス・スター」が海賊に乗っ取られ、二千五百万ドルの身代金を要求されたように、ペルシャ湾岸産油国にとっては原油輸送路を寸断される危機である。しかし対応に本腰を入れているようには見えない。なぜなのだろうか。 タンカーの乗っ取りなど大規模な事件が相次ぎ、各国の艦船派遣などが進む中で、ようやく十一月二十日にエジプトのカイロで紅海沿岸諸国の会議が開催された。エジプトとイエメンが共同議長となり、サウジアラビア、ヨルダン、スーダン、エリトリア、ジブチ、ソマリア暫定政権の代表が出席した。共同宣言では海賊問題の原因を「ソマリアの政治・治安・人道的な混乱」と認め、国際的な共同行動を呼びかけた。

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