新興国でも販売不振が顕著となり、今や世界同時自動車不況が到来した。だからこそ、二十一世紀の新たな産業像を描かねばならない。 世界の製造業の頂点に君臨してきた自動車産業がもがき苦しんでいる。ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード、クライスラーの米ビッグスリーの救済問題は、ホワイトハウス、民主党指導部、上院の間で決着がつかず、GMなどは破綻の瀬戸際に立たされている。実質的に世界ナンバーワンの自動車メーカーとなったトヨタ自動車は十一月に二〇〇九年三月期決算の最終利益を一兆円下方修正する「トヨタショック」を世界に与えたが、さらに販売低迷と急激な円高で下期決算が一千億円前後の赤字に転落する恐れが出ている。ホンダは技術力の象徴だった「F1」からの撤退を決めた。軽自動車をベースに途上国市場で存在感を広げてきたスズキは七十八歳の鈴木修会長が社長に復帰し、陣頭指揮を執ることになった。快走を続けてきた日本メーカーはじめ世界の自動車産業に一体、何が起きたのか。 日本二七%減、米国三六%減、中国一〇%減、インド二三%減、ブラジル二五%減――。〇八年十一月の各国の新車販売台数の前年同月比の実績だ。先進国はもちろん、急激なモータリゼーションの進展で世界の自動車産業成長の原動力となっていた新興国も一斉に販売が落ちこんだ。まさしく「世界同時自動車不況」(トヨタ自動車幹部)といってもよい状況だ。

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