〇七年三月に携帯電話事業に新規参入したイー・モバイルが、月間の契約純増数で〇八年十月に続き十一月も二位を確保。契約件数でも百万件を突破し“順調”に顧客を獲得しているが、実は経営は赤字続きで「事業継続の危険ラインを抜け切っていない」と、崖っぷちの状態が業界で注視されている。 イー・モバイルは高速のデータ通信を売り物に他社から顧客を奪っている。スマートフォンなど高速データ通信の利点を生かせる端末を投入して個人の「モバイルデータ通信」市場を創り出した。関係者は「現在携帯電話会社で最も速いデータ通信サービスを提供しており、最大手のNTTドコモでも追いつくにはしばらく時間がかかる」と指摘する。また、定額制の低料金プランも人気となっている。 一方、弱点は通話エリアが狭いこと。イー・モバイルが公表する人口カバー率は八六・六%(〇八年九月末)だが、大都市圏を除くと市の中心部しかカバーできない地域が多く、他の携帯会社並みに通信網を整える目処は立っていない。 経営上最大の課題は資金面にある。調達した資金の一部に一定数以上の契約獲得が融資継続の条件になっているものがあるが、現状の契約獲得のペースは「クリアできるギリギリのライン」(関係者)。家電量販店に多額の販売奨励金をつぎ込み、小型の低価格パソコンを通信用のデータカード端末とセットにして百円など格安で販売して契約増につなげているが、これは手元資金の食いつぶしにつながる。

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