改革を葬られた日本漁業が溺死する

執筆者:一ノ口晴人2009年1月号

せっかく提言された改革を、よってたかって潰した者たち。このままでは漁民も消費者も苦しむことに――。 二〇〇七年七月の参議院選挙で大敗してから自民党は宗旨替えをした。水産業の構造改革の旗を降ろし、「漁村にやさしい」政策に逆戻りしたのだ。日本漁業は「緩やかな死」にむけて歩を進めている。 周囲を海に囲まれる恵まれた環境にありながら、日本の漁業は衰退する一方だ。かつては一一三%(一九六四年度)もあった水産物自給率(食用魚介類)は五七%(〇五年度)に激落。水産物の輸出国だったのは今や昔話だ。 輸入水産物や、肉など他の食材との競合で魚の値段は安く、漁師の儲けは少ない。漁船を新造する資金に乏しいため、大半の船齢は適正更新期に入る「建造後十五年」以上だ。担い手も集まらず、六〇年代に約六十万人いた漁業就労者数は約二十万人(〇七年)に減少、そのうち三一%が六十五歳以上と高齢化が止まらない。さらにマグロなど一部の魚種では資源が枯渇する恐れが出ている。 漁業には、遠洋漁業、沖合漁業、沿岸漁業、養殖業の四種類がある。捕鯨やサケ・マス漁を中心とする巨大産業だった遠洋漁業は、一九七三年のオイルショックや七七年の国際的な排他的経済水域の設定(二百海里規制)以降、急激に衰退した。いま構造改革を急がなければならないのは沿岸漁業だ。

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